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  hiro通信         

  hiro通信         

**偏向教師

■1.「アサハカな思い上がり」■

 あなた達の親の一人が「増田先生は、けしからん教育を
している」というような内容の電話を教育委員会にしたそ
うです。・・・教育委員会に密告(若者スラングで言う
『チクリ』)電話や密告ファックスを送るというクラーイ
情熱やエネルギーには敬意を覚えますが、私はこの親の要
望に添うわけにはいきません。・・・

 親の自分の「思想」が教師の「憲法に忠実な思想」と合
わないからと、教師の教育内容に介入しようなどと笑止千
万な、あまりにも「アサハカな思い上がり」と言うべきで
す。[1,p62]

 足立区立第16中学校の増田都子・教諭が平成9年7月16
日、2年生の3つのクラスで配布したプリントの一節である。

 このプリントを受け取った生徒の一人は、友達のK子さんの
お母さんの事だと直感し、心配のあまりコンビニでコピーをし
て「こんなひどいプリントが配られた」とK子さんに渡した。
K子さんは:

 頭の中が真っ白という感じで、怒りと恐ろしさが入り交
じった状態で、ことばがでなかった。読んですごくつらかっ
た。米軍基地ということで、私とつながりがあるというこ
とがすぐ分かった。友達もあなたのお母さんのことだと思
う。クラスでも、K子さんのお母さんの事だと言っていた。
[1,p66]

 K子さんが登校拒否に陥り、ついには転校まで余儀なくされ
たつらい日々が、こうして始まった。

■2.やってきた増田都子教諭■

 K子さんのお父さんはアメリカ人で英語教師をしている。お
母さんはごく普通の主婦だ。二人姉妹で、日本とアメリカとの
両方の国籍を持つ。お母さんは日頃から「ふたつの文化を持て
ることに誇りを持ちなさい」と教えていた。

 中学1年の時に一家が埼玉県に引っ越したので、お母さんが
近くの中学への転校を勧めたが、K子さんは「友達が16中に
はたくさんいる」と、大好きな16中に通い続けた。

 その16中に増田都子教諭が転任してきた事で、すべてが一
変してしまった。6月にPTAの集まりがあり、K子さんのお
母さんも出席した。そこに同席した父兄が「これどう思う」と、
増田教諭が配布したプリントを見せてくれた。

 そのプリントは、「沖縄の米軍基地 普天間第2小の場合」
というビデオを見せて生徒に書かせた感想文、および沖縄の反
戦地主のインタビュー記事の抜粋をまとめ、それに増田教諭自
身のコメントをつけたものだった。コメントの中には次のよう
なものもあった。

・アメリカ政府はアメリカの国益をおびやかす国があれば
いつでも戦争をすると明言しています。そのために沖縄
=日本の米軍基地は絶対に必要とアメリカ政府は言って
いますよ。
・沖縄の人達は、もちろん抵抗できる限り抵抗しましたが、
米軍は暴力(銃剣とブルドーザー)でむりやり土地を取
り上げて基地を作ったというのが歴史的事実です。

 中国の軍事力増強や北朝鮮の核ミサイル開発などは伏せてお
いて、一方的に米軍基地の問題のみを取り上げれば、生徒たち
が次のような感想を持つのも当然だろう。

・アメリカ軍は日本を守ってくれるといっても今まで本当
に日本のために何とかしてくれたのか?
・日本の政府が沖縄を見捨てていったようなものだと思っ
た。

■3.「アサハカ」「ド厚かましい」「恥知らず」「馬鹿」■

 もちろん、こうした授業に反発した生徒もいた。「先生はし
つこい。なんで米軍にこだわるのか」という感想を書いた生徒
には、増田教諭はこんなコメントを書いた。

 アサハカに満足しているという態度を選ぶのは君の問題
であって、先生の感知するところではありません。

 別の生徒が「先生の言葉遣いが気になります。『ド厚かまし
い』『恥知らず』とかの言葉は、もっと他の言葉は使えないの
ですか」と質すと、

 私はいつも「馬」は「馬」といい、「鹿」は「鹿」とい
い、「馬」を「鹿」というものには「馬鹿」ということを
ためらったことのない人間です。「恥知らず」であるとい
う事実をそれを知らない人に教えてあげるのは「先生」の
仕事だと思っています。

 思想うんぬんの前に、こういう事を平気で言う精神に何か異
様なものが感じられないだろうか。

■4.「それは16中ですね」■

 帰宅したK子さんも米軍基地に関するプリントを母親に見せ
た。母親は「余りにもひどい反米攻撃に震えを覚え」、アメリ
カ人の父親を持つ娘の気持ちを考えたら、思いやりに欠けてい
るのではないかと思って、教頭に電話した。教頭は「まったく
おっしゃるとおり」と言った。

 母親は足立区教育委員会指導室に電話した。学校名も伏せた
のに、相手は「それは16中ですね」と答えた。増田教諭の前
任校である12中の保護者からも「困る」という電話をよく受
けていた、という。

 指導室から16中に連絡が行き、校長が増田教諭に「アメリ
カ国籍の生徒もいるので配慮すること」と注意すると、教諭は
母親宅に直接電話をかけてきて、校長の指導に反論し、今後は
自分に直接話をするように、と言ってきた。母親は、再度、こ
うした電話があったことを校長に伝えた。

 冒頭の「アサハカな思い上がり」というプリントは、この後
で増田教諭が3つのクラスに配布したものだ。学校からの報告
を受けた指導室は適切な指導を要請。PTA会長も来校して、
個人攻撃であり、不適切だと教頭に伝えた。校長は増田教諭に、
「プリントが個人攻撃になっている」「今後、授業に使う印刷
物は事前に管理職に見せること」と再度、注意した。それを真っ
向から否定するかのように、増田教諭は残る2つのクラスにも、
同じプリントを配布した。

■5.「間違った者に奉仕する必要はない」■

 校長も手を拱いていたわけではない。直接、増田教諭に指導
を行った。[1,p121]

校長 校長の責任の持てない資料の配布は認めません。こ
の文書は個人攻撃であり、人権問題である。釈明し、
責任をとってもらう。
増田 問題とは思わない。自分の考えを表現することは間
違いとは思わない。

 こんな押し問答が何度も繰り返された。

校長 謝罪するようにお願いするということは職務命令で
す。
増田 謝罪しません。(中略)
校長 先生は公務員ですから国民に奉仕しなければならな
い。
増田 間違った者に奉仕する必要はない。

■6.「もう人間でいることがイヤになった」■

 校長はK子さんの自宅を訪ね、「このたびは大変なご迷惑を
お掛けして本当に申しわけありませんでした」と謝罪したが、
加害者である増田教諭は「自分には非がない」と、かえってK
子さんを冷たい視線で眺めるだけだった。

 ある日、増田教諭がクラスに入ってきて、「にやにやしなが
ら、こちらを見ていた。私(K子さん)はのどに込み上げるて
くるものを必死で抑えていました。」

 そんな日々に耐えきれず、12月にはK子さんはついに登校
拒否になってしまった。「負けてはだめ」と諭す母親に「負け
たくないからここまで頑張って学校に行ったんだよ」と泣き崩
れるK子さんに、母親はそれ以上、慰める言葉もなかった。

 病院にも週2回通い始めました。娘はげっそり痩せ、目
は虚ろな毎日でした。夜は眠れず、何をするにも気力が湧
いてこない日が続きました。[1,p79]

 娘は、9日より学校に行けなくなっております。思春期
の真っ只中、死ととなり合わせの苦悩の中にいる娘を救っ
てあげたいと思っても、親でも救ってあげられない無力さ
を感じている毎日です。「・・・このままだと自分は水を
もらえなくて育たなくなってしまう雑草のようになってし
まう。もう人間でいることがイヤになった・・・・」
[1,p112]

 翌平成10年3月、K子さんは転校を決意した。大好きだっ
た16中の友達と別れなければならなかった。

■7.教育委員会の無為無策■

 K子の母親は、足立区の教育委員会指導室に電話をしたが、
「直接、担当の者から電話連絡します」という返事だけで、そ
の後はなしのつぶてだった。東京都の教育委員会に手紙を出し、
直接出向いて訴えもしたが、区の教育委員会のほうに「適切に
処理するよう」指示したのみだった。

 校長からも平成9年11月に足立区教育委員会あてに「教員
の職務命令違反及び信用失墜行為違反について(報告)」が提
出されていた。この頃、K子さんはなんとか学校には通ってい
たが、増田教諭の授業を受けられず、図書館で自習をしていた
のだが、具体的措置は何もとられないままだった。

 それどころか、増田教諭は教員組合の16中分会長の立場で、
校長に「良心の存在証明をする機会を与え」たが、校長が拒否
したので、東京都人事委員会あてに校長の解職・更迭の措置要
求書を出す始末だった。やりたい放題である。

 実は今回の事件は足立区教育委員会にとっては初めてのもの
ではなかった。増田教諭が前任校の12中にいた平成8年6月、
保護者から「指導に偏りがある」との訴えがあり、校長を通じ
て、注意をさせていた。こういう訴えは何度もあったが、増田
教諭は逆に、そのような親を密告者と攻撃している有様である。

 平成9年3月の卒業式では国歌斉唱の際に、5、60人の子
供たちが一斉に座ってしまう、という事件が起きた。区議会議
員が文教委員会でこの問題を指摘したが、区の教育委員会は増
田教諭に「今後誤解を招く指導」を行わないように指導しただ
けで、うやむやに済ましてしまった。

 K子さんのお母さんが、教育委員会に電話した時に、即座に
「16中ですね」と言ったのは、増田教諭がすでにこれだけの
前科を犯していたからである。それにも関わらず、口頭注意だ
けで済ませてきた結果、遂にK子さんのような犠牲者を生んだ
のである。

■8.立ち上がった人々■

 K子さんが登校拒否となり、ついには転校に追い込まれなが
ら、増田教諭は何の処分も受けずに、教壇に立っている。この
ままでは第2、第3の犠牲者が出る恐れもある。平成10年8
月、土屋たかゆき都議は都議会文教副委員長として、増田教諭
の懲戒免職を求める要請書を出した。

 しかし、都教育委員会は11回もの聞き取り調査をしたもの
の「処分後、不服申し立てや裁判になる可能性が高い」として、
処分に関する結論を出せなかった。行政の無策に怒った市民が
「足立16中の人権侵害を考える会」を結成し、11月12日
には、都議会議会棟で200名もの参加者を得て、抗議集会を
開いた。「体罰を加えた教師はかならず処分されるのに、どう
してこれほどの事態を招いた教諭は教壇に立ち続け、事実上、
野放しにされるのか」と批判の声が巻き起こった。

 11月17日、都教育委員会は、ようやく増田教諭に「減俸
10分の一 一ヶ月」の懲戒処分を下した。しかし、増田教諭
は翌平成11年3月、PTA名簿を勝手に利用し、学校の印刷
機を使って、全保護者あてに処分反対の手紙を出した。この件
も古賀俊昭都議が文教委員会で追求した結果、4ヶ月も経って
から、再度「減俸10分の一 一ヶ月」の処分が下された。

 増田教諭は平成11年9月1日から6ヶ月間、都立教育研修
所において研修することが命ぜられたが、この間にも勝手に1
6中で文書を配布するなど、問題を起こし続けた。研修の成果
が上がっていないとして、2度目、3度目の研修命令が繰り返
された。研修期間中は勤勉手当まで支払われているというが、
確かに見上げた勤勉ぶりである。

 K子さんの母親は増田教諭を名誉毀損で訴え、東京地裁は被
告に30万円の支払いを命じたが、東京高裁は「賠償責任は公
務員個人でなく、行政が負う」として逆転判決を下した。一方、
増田教諭は都教育委員会に処分取り消し訴訟を連発したが、い
ずれも最高裁までいって棄却された。さらに今度は土屋都議や
市民団体代表を名誉毀損として訴え、「偏向教育」「人権侵害
教育」「完全に失格した不適格者」などの表現は事実であると
認定されたものの、「過激派・犯罪者・魔女」などの表現では
名誉毀損が成立した。

■9.1464人のミニ増田教諭■

 これほどの人権侵害を行った教師を都や区の教育委員会が即
座に処分できず、被害者、都議、市民有志が裁判を通じて訴え
るしか手段がない、というのは、どうにもおかしい。

 都が減俸処分を下した時、ある教育庁の職員は「美濃部都政
以降、画期的な処分だ」と言っていた。美濃部革新都政時代は
社会党、共産党が幅をきかせていて、問題教員への処分が規定
通りできず、時には美濃部都知事から担当部長に教員の処分に
関して慎重に行うように、という電話が入ったそうだ。こうし
た前例があったので、教育委員会も増田教諭の処分に二の足を
踏んだようだ。

 増田教諭が都教職員組合の役員に立候補したところ、総数1
万3824票のうち、1464票も獲得した。それだけの教員
が増田教諭の行動を支持していることになる。ミニ増田教諭は
あちこちに潜伏していて、閉ざされた教室の中で子供たちに独
裁権力を振るっているようだ。
(文責:伊勢雅臣)


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